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加工コラム
板金加工会社を運営するプロが教える、現場の声を取り入れた板金加工のリアルなコストの話。
今回はコストの大半を占める材料費に焦点をあてたコラム。
SUS304とSUS430の違いから、実際のサイズを元にした材料費の価格差をまとめました。
計算方法やコストの違いなど板金コストの上がる理由・下がる理由がわかります。
更新:2024年1月23日 材料の単価更新
目次
SUS304・SUS430とはいわゆるステンレスのことであり
鉄との違いは磁石につかないというところかと思われます。
ナイフやフォークといった食器などに使われサビに強く耐食性のある材料です。
板金加工においてはSUS304やSUS430が一般的に使われ図面などに
「ステンレス」と記載があればSUS304材を使用するのが一般的かと思われます。
材料会社や加工会社などの業界では「サンマルヨン(304)」「ヨンサンマル(430)」と呼ばれることが多く
ちなみに頭に記載のあるSUSは「Steel Use Stainless」の頭文字をとっています。
呼び方としては「サス(SUS)サンマルヨンのツービー(2B)で2mmの板」などと呼ぶことが多いです。
SUS304とSUS430は同じステンレスであり、見た目に大きな違いはありません。
性能や性質などでは違いが多くみられるため、
耐熱性・耐食性・強度・磁性・見た目の点から違いをみてみたいと思います。
【耐熱性】
SUS304材のほうが耐熱性が高くさらに熱伝導率も高い特徴があります。
【耐食性】
腐食性・耐食性とはいわゆるサビやすさでありステンレスということで
共に高い耐食性を持っていますが、SUS304の方が優れています。
【強度】
強度についてもSUS304材の方が優れています。
【磁性】
SUS304は磁石につかず、SUS430材は磁石につくという特性があります。
【見た目】
SUS304は一般的な2B材となると、くすみがかかったような表面の見た目であり
「#400」「BA」といった研磨を施すことで顔が映るような鏡面になります。
SUS430は2Bですでに薄っすらと顔が映るような鏡面になっており「#400」相当の見た目になっています。
以上をまとめたものが下記の一覧になります。
SUS304とSUS430を比較した際に性能的に優れているのが
SUS304材であるため単価についてもSUS430より高い傾向があります。
比重は SUS304=7.93 SUS430=7.7 と差があまりありませんので
材料費の違いはそのまま材料のベースとなるキロ単価によって差が生じます。
比重がほぼ同じのSUS304とSUS430の材料費の違いはどのくらいなのか。
加工会社や材料会社では「SUS430のほうが安いですよ」という提案や声を聞くかと思いますが
果たしてどのくらい違うのか。サンプルを使って計算したいと思います。
【サンプルサイズ】
板厚2.0t X辺500mm×Y辺500mm サイズの板
材料費の計算式は「キロ単価×重量」で求められます。
(例:キロ単価が500円の物が5キロ分あれば2500円ということ)
サンプルサイズの重量を計算すると
板厚2.0t×X辺長さ500mm/1000×Y辺長さ500mm/1000×比重(SUS304=7.93 SUS430=7.7)
計算式ではこのようになり、そこから求められる重量は
SUS304が3.96キロ SUS430が3.85キロ
となります。(肉抜きなど施されている場合では重量は異なります)
材料のキロ単価は令和5年12月時点では
昨年の上昇傾向が一服し、金額が下落傾向や落ち着きをみせており
SUS304が700円/キロ → 660円/キロ と下降
SUS430が450円/キロ → 450円/キロ と落ち着き
となっているので
「キロ単価×重量」のため
SUS304材 3.96キロ×700円 =2772円
SUS430材 3.85キロ×450円 =1732円
となり差額約1040円となっていたものが。
SUS304材 3.96キロ×660円 =2614円
SUS430材 3.85キロ×450円 =1732円 変更無し
となり差額約882円となっています。
前回のSPCとSECCでの差額はわずかであったが(参考:https://ueno-ss.com/column/column001/)、
ステンレス材となると材料費が鉄に比べて高いためSUS304とSUS430との差額の大きさがわかります。
材料費は板金加工の単価においては「原価」という項目になり
加工内容によっては加工費よりも材料費の方が大きくなる場合もあります。
それだけ重要になる材料費について、
コストを優先すればSUS430となるところですが、耐食性や強度などを踏まえると
どうしてもSUS304を指定材料にするしかないのかもしれません。
しかし、製品の構造上内部に使われるため耐熱性や耐食性は問わないということであれば
SUS430でも十分品質を維持することは可能ではないでしょうか。
実際、半導体検査装置などに使用される材料ではSUS430が使われていることが多く
機械の外側など耐熱性や強度が必要になっているところではSUS304が使われています。
つまり特別な性能が必要ない場所であれば「SUS430」と指定されればコストの下げる大きな要因に出来るのです。
またSUS304材の上昇カーブの大きさを考えるとSUS430の使用は長い目でみたコストダウンに貢献できるのではないでしょうか。
何気に材料指示を「SUS304」と記載するのでなく価格差や
メリットデメリットから考えることでコストの上げ下げを生み出すことができます。
◆
上野製作所では材料費の違いからコストを見直すことで
お客様の求める製品のコストや日程などを一緒に考え答えを提供し続けます。
板金加工をご検討の方は、お気軽に上野製作所にご相談ください。
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